個人によるタバコ栽培は合法なので、無許可で行ってもいいんですよ!

手前味噌ながら、ソクラテスの煙草は、今のところ、日本で唯一のタバコ種子の専門店です。2019年向けの品種のラインナップは20種ほどですが、タバコ専門のシードバンクとして、未来の人々にできるだけ多くのタバコ品種を引き渡すため、販売用とは別に百数十の品種を栽培・採種し、維持し続けています。

とはいえ、ただ種子を販売するだけでは、タバコという“法的にちょっと特殊な植物”を専門に扱う業者としての責任を果たせていないと思うので、定期的に、法律関係の記事を書いています。

そんなわけで、今回は、「タバコは無許可で育てても大丈夫です」というお話です。

個人によるタバコの“栽培”を禁止する法律はありません

表題にあるように、今の日本には、個人によるタバコの自家栽培を禁止する法律はないので、タバコは、だれでも、無許可で栽培して大丈夫です。

ホントに大丈夫なの?

と心配される方には、ご自身でたばこ事業法の原文に当たっていただくしかないのですが、具体的な事例の一つとして、「サカタのタネ」などの大手種苗会社は、法律上“たばこ”に分類される植物を鑑賞用として販売していますよ、という内容の記事を書きましたので、よろしければこちらもご参照ください。

関連記事「タバコの栽培」に法的な疑問を感じるなら、サカタのタネにいってみればいい

栽培はOK。でも、JT以外の者は“製造たばこ”を製造してはならないっ!

で、ここからが肝心なところで、

まっことに残念ながら、われわれ一般人は、自分で育てたタバコを加工することはできません。

え、自家消費もダメなの!?

と感じますが、ダメなんですなこれが。

「たばこ事業法第八条」でそう定められているんですね。

第八条  製造たばこは、会社(JT)でなければ、製造してはならない。

ここでいう“製造たばこ”とは、われわれが一般的に“たばこ”と呼んでいるものや、“噛みたばこ”、“スナッフたばこ”のことです。用語については同法第2条で定義されています。

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一  たばこ タバコ属の植物をいう。

二  葉たばこ たばこの葉をいう。

三  製造たばこ 葉たばこを原料の全部又は一部とし、喫煙用、かみ用又はかぎ用に供し得る状態に製造されたものをいう。

しかし、われわれ菜園オタクにとっては幸いなことに、今のところ、この法律が個人の領域に介入してくるのは、“製造”の段階についてだけなんです。

だから逆に言えば、製造しさえしなければ、栽培でもなんでもやっていいんです!

このことを具体的に表しているのは何と言ってもやはりタバコ農家でしょう。

タバコ農家は、“JT以外の者”なのにタバコ栽培してます!乾燥もしてます!

日本には、現在、約8000戸のタバコ農家があります。

彼らは、タバコを栽培し、収穫し、乾燥し、JTに卸しています。

たばこ農家になるのに特に許可とかはいりませんが、タバコ農家は、「育てたタバコをJTが全量買い取ってくれる」という謎の制度があるので、おそらく全員がたばこ耕作組合に加入しています。

そして、この組合の規定などを定める法律が「たばこ耕作組合法」です。

この法律には、ご丁寧にも、農家、つまりJT以外の者がやってよいことが規定されています。

第八条 組合は、次の事業の全部又は一部を行うことができる。

 たばこの耕作並びに葉たばこの乾燥及び調理の方法の改良
たばこ事業法は「製造してはならない」というネガティブリスト方式ですが、こちらは「次の事業を行うことができる」というポジティブリスト方式を採用しています。

つまり、「組合以外の者は次の事業を行ってはならない」ということではないんですね。

たばこ事業法的には、組合も組合員も「JT以外の者」ですので、組合や組合員が行っていいことを我々一般の菜園家が行ってダメな理由はありません。

ということは、われわれ一般人が合法的な範囲でできることの限界は、タバコ農家と同じく、「乾燥及び調理の方法の改良」まで、ということになります。ここまでなら“製造”とはみなされていないんですね。

なので、極端な話、われわれのような個人でも、自分で栽培し乾燥だけ施したタバコを海外に輸出して、そこでたばこ会社を作って、現地で葉を加工して、日本に輸入すれば、一応、たばこを一から自作することは不可能ではないんですよね。超大赤字でしょうけど(笑)

栽培ならOKな今のうちに、タバコの遺伝資源を全国の菜園家の元へ

当店としては、タバコ栽培愛好家やアマチュアタバコ農家を増やすことを通して、「中小企業のたばこ業界への参入規制の緩和」と、「個人による自家製造・自家消費解禁」を引き続き訴えていくつもりです。

「JT以外の者による製造たばこの製造」が禁止されている現状では、当店の種子の用途は、「育てたタバコを鑑賞する」というマニアックな行為ぐらいしかありませんが、私は、用途は何であれ、この愛すべき植物の遺伝子を、栽培だけなら無許可で誰でも行える今のうちに、全国の菜園家の元に分散させてておかなければならないと思うのです。私の採種圃場だけでは、病害虫や自然災害へのリスクヘッジは全然できませんから。

もしも明日、「禁煙法」みたいなものができて、たばこが社会から抹消されてしまったとしても、どこかの菜園家がこっそりと栽培・採種していれば遺伝子は後世に残せます。

遺伝子さえ残っていれば、法律なんてものは後からいくらでも修正できます。

煙草好きの人々の時代が来るまでじっと待っていればいいのです。

とはいえ、この記事で書いたように、日本の在来種タバコなんかはすでに絶滅しかかっていますし、いま日本で栽培されているタバコの品種は、両手で数えられるぐらいしかありません。

タバコの遺伝資源の消滅は、遠い未来の話などではなく、もうすぐそこまで来ています。

 

種子販売ページはソクラテスの煙草へどうぞ。

“葉”を使わなければたばこの自作は合法か?そもそも「喫煙」の定義とは何か?

タバコの苗の作り方 まとめ編

5件のコメント

  1. はじめまして。楽しく拝見しております。

    タバコの栽培を考えているのですが、
    鹿の食害が酷く、もう何年も菜園を断念しています。

    数種類の品種を育ててみたいのですが、
    フェンスの設置できる広さは限られてしまうので
    あれこれと考えています。

    残った種の発芽率は来年になるとかなり落ちますか?

    ともかく、後日注文させて頂きます。
    よろしくお願いします。

    1. ブログをご覧いただき、光栄です。

      タバコの種子は比較的寿命が長いので、常温で保存しても、2年ぐらいなら発芽率は全然実用レベルを維持します。

      参考までに、私がアメリカから輸入した遺伝資源の中には採種年から3年ほど経っていた種子もありましたが、普通に発芽してましたよー。

      念のため、シリカゲル等の乾燥材とともに密閉容器に密封し、冷蔵庫の隅のほうに保存していただければ万全です。

      苗の作り方などはこの記事などを参考にしてください。

  2. >takaさんへ追記

    ちなみに、タバコはシカやイノシシの食害を受けません。

    現在日本に残っているタバコ農家は、山間部の農家さんが多いですが、これは、動物の食害を受けやすい山間部で育てられる作物がタバコの他にないからということでもあります。

  3. そもそも薬物でもないタバコの販売を国が独占している事はヤクザの売春管理と同じレベルに思えます。タバコの個人での製造、販売をやってはならない道義的な問題など感じません。誰にも迷惑などかけないからです。そこから税金を搾り取るなんて本当にヤクザです。フラダースのネロのような純朴な私には耐えられず、タオルを噛む思いです。
    ソクラテスさんが国政に打って出るか、革命でガラガラポンしてくれるから、まってます。

    1. ビットK様へ

      個人での「販売」を禁止するかどうかというのは、たばこが酒と同じく大きな税収源となっている以上、十分な議論が必要な繊細な問題かもしれません。

      しかしながら、「そこらのコンビニで普通に売っているものを、自分で造り、自分で消費する」という領域にまで国が規制をかけるというのは、近代国家の在り方としては明かにおかしいと私も思っています。

      また、独占禁止法があるこの国で、JTの独占を国が保証するというダブルスタンダードは、国際問題になり得るレベルのおかしな話ですから、先進国の一員としてすぐにでも解消すべき制度です。

      私が国政に出るかという話は、残念ながらまだまだ機が熟していません。人々の間で、まだ本当の意味で「たばことはそもそもなんなのか?」というのが知れ渡っていませんから。
      だからこそ今は、種の提供を通して、「タバコはこんな植物である」というのを皆に知ってもらいたいのです。

      「革命でガラガラポン」というのは私のあまり好きじゃないやり方です。いまのところ日本は一応は民主主義の国ですから、法律を変える力はわれわれ市民の側にあると思うのです。
      みんなが「それはおかしいじゃないか」という認識を持ち、考え、議論し、正当なやり方で制度を変えて行くそのプロセスからこそ、いい世の中が生まれるはずです。

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