現行のたばこ事業法第八条には、
第八条 製造たばこは、会社でなければ、製造してはならない。
という文言がある。ここでいう“会社”とは日本たばこ産業、すなわちJTのことだ。つまり日本では一般人がたばこを自作することは違法なのだ。
では、“たばこ”は法律上どのような物であると定義されているのか?
これも同法第二条に明確に書いてある。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 たばこ タバコ属の植物をいう。
二 葉たばこ たばこの葉をいう。
三 製造たばこ 葉たばこを原料の全部又は一部とし、喫煙用、かみ用又はかぎ用に供し得る状態に製造されたものをいう。
※筆者注 我々が一般的にいうたばこは法律上は“製造たばこ”と定義されている。また、単に“たばこ”というだけなら、それは“タバコ属の植物”のことを指している。当ブログでは通常、混同を避け、かつ“製造たばこ”という見慣れない専門用語を使わないで済むように、たばこ事業法上の“たばこ”を“タバコ”と、“製造たばこ”を“たばこ”と表記しているが、本記事では、たばこ事業法の用法に従うことにする。
たばこ事業法第二条に基づけば、“製造たばこ”とは、“葉たばこ”=“たばこの葉”を原料に用い、“喫煙用、かみ用、かぎ用に供しうる状態に加工されたもの”ということができる。
したがって、“たばこ”の、葉以外の部分、すなわち、根、茎、花、つぼみ、種子などを用いたものは“製造たばこ”には該当しない。よって、“たばこ”の茎を使って、喫煙に供しうるものを自作しても、それは法律上の“製造たばこ”には当たらない。だから葉を使わなければ自作しても合法だ・・・
といいたいところだが、実はたばこ事業法にはそんな抜け道を封じる条文が第三八条のなかに存在する。
第三十八条1 製造たばこ代用品は、これを製造たばことみなしてこの法律の規定を適用する。2 前項に規定する製造たばこ代用品とは、製造たばこ以外の物であつて、喫煙用に供されるもの
この条文の第二項には、
“製造たばこ代用品”=“製造たばこ以外の物であつて、喫煙用に供されるもの”
という定義がある。つまり、
“喫煙に供されるもの”であれば、“たばこ”の茎や花など、葉以外の部分を原料にしても違法である。
それどころか、“たばこ”にとどまらず、そのへんの雑草でも、新聞紙でも、ティッシュでも、ウッドチップでも、原料は何であれ、“喫煙に供されるもの”なら、“製造たばこ代用品”=“製造たばこ”となり、製造したら違法なのだ。
そもそも「喫煙」という言葉の法律上の定義とは?
ならば、この“喫煙に供されるもの”とは法的にどんな状態のものなのか?
意外にも、「喫煙」という用語については法律上の明確な定義がない。
ためしに、ネットの無料国語辞書、三省堂Web Dictionaryに「喫煙」と打ち込むと、
喫煙=タバコを吸うこと
と出てきた。
とりあえずこの定義を使って、ここまでをまとめると、以下のようになる。
喫煙=タバコを吸うこと→では“タバコ”って何?
“タバコ”=“製造たばこ”=“製造たばこ代用品”=“製造たばこ以外の物であつて、喫煙用に供されるもの”=“製造たばこ以外の物であつて、「タバコを吸うこと」用に供されるもの”
となる。
ここで、“製造たばこ以外の物であつて、「タバコを吸うこと」用に供されるもの”とは何か?
を明確にするためには、タバコとは何か?を定義せねばなるまい。
ということで再び、
タバコって何?という問いに戻る。
“タバコ”=“製造たばこ”=“製造たばこ代用品”=“製造たばこ以外の物であつて、喫煙用に供されるもの”=“製造たばこ以外の物であつて、「タバコを吸うこと」用に供されるもの”
じゃあタバk・・・
!?
無限ループに入ったんだが・・・
「喫煙」という言葉の定義が明文化されていないせいで、“製造たばこ代用品”の定義がきわめて曖昧になっている!
こんなトートロジーが法律の条文の中に存在していいのだろうか?
これって、仮に事件化した場合、税務官や裁判官の尺度でどうにでもなるってこと?それとも、明文化されてないから、そもそも事件化できないってこと?
たとえば、“たばこ”の茎を乾燥させてたき火として燃やしたら、たき火=喫煙→“たばこ”の茎=“製造たばこ代用品”→「JT以外の者がたばこ作ってるやんけ!」で違法となるのだろうか?
だとしたら、普通の薪も“たばこ”の葉以外の部分も、法律上は区別されない普遍的なの有機物だから、キャンプ場でたき火してる人は全員違法行為をしていることになる・・・のか?
鑑賞・生体研究用途とはいえ、“たばこ”を育ててその種子を販売している身として、このあいまいさはかなり怖いのだが・・・
まあ「喫煙」という言葉の法律上の定義がない現在、我々のようなアマチュアのたばこ栽培家は、栽培後の残渣の処理をしっかりするなどして、できるだけグレーな領域を排除することに努めるのが望ましいことは言うまでもないのだが。
タバコ種子のソクラテスの煙草