日本でJT以外の者がたばこを作れないのは、約30年前、専売公社が廃止された際に、タバコ農家団体が政治に圧力をかけて、「JT以外の者は国内でたばこ作っちゃダメな」という規制を法律にねじ込んだからだ。
「たばこ事業法」でJTにたばこの製造独占権を与え、「JT法」で政府がJTの筆頭株主になることを義務付けることによって、農家たちは、自分たちの作った葉タバコを国際標準価格よりも高い価格でJTに買い取らせることにしたのだ。
当時のタバコ農家の数は約8万戸ほどだったから、彼らは政治家にとってもそれなりに無視できない存在であったし、一昔前まではJTといえば財務省官僚の格好の天下り先だったから、普通に考えればありえない“独占”という形態を、法律によって保障することも可能だった。この制度は農家にとっても政治家にとっても、官僚にとっても、美味しい制度だったのだ。なにせ、損をするのは価格競争や競争による品質向上にあやかれない大多数の消費者だけなのだから。
だが、タバコ農家たちにとって、これは所詮ただの延命措置でしかなかった。
それは、この30年でタバコ農家の数が約8千戸にまで減ったことを見れば明らかである。専売公社廃止時に比べれば、農家の数は約10分の1にまで減っているのだ。
でもこれは考えてみれば当然のことで、競争を排除し、一部の利害関係者だけで富を独占しようとする者たちが生き残ることなど許されないのが今の世の中だ。新しい製品や価値観は、そうした生ぬるい場所からは生まれない。
たとえば、ここ数年日本でのシェアを拡大しているアメリカンスピリットは、何を入れてるんだかわからない工業製品みたいなたばこで埋め尽くされた日本の市場で、オーガニックを武器に無双ともいえる躍進を遂げた。アメスピは柔軟な発想で新しい価値観を喫煙者に提示することで、普通のたばこより高価格帯であるにもかかわらず成功を収めたのだ。
その結果として、一昨年、JTが6000億円という破格でアメスピを買収することになったのは記憶に新しい。アメスピは日本で専売公社が廃止されたのとほぼ同時期に立ち上がったブランドであり、まだ30歳かそこらの若いブランドだから、6000億円でのイグジットは、大成功だといっていい。
だが、もしも日本の制度がJTだけでなくほかの中小企業の参入を許していたなら、日本国内でアメスピみたいなオーガニック戦略で勝負するメーカーが立ち上がっていたとしてもなんら疑問はない。いや、我々日本人の根強い有機信仰や農耕民族的性質を考えれば、絶対に数社のオーガニックたばこメーカーは生まれていたはずである。
そして、もし仮にアメスピみたいなメーカーが国内で立ち上がっていたら、そのメーカーが数千億でJTに買収される、すなわち、日本国内での華々しいイグジット事例が一つ誕生する、ということも十分に起きえた。たいていの場合、オーガニックたばこメーカーは農家と蜜月な関係にあるか、農家や農家組合そのものがメーカーの主体になっているかするだろうから、数千億での会社売却は農家に多大な利益をもたらしたはずである。
そういう可能性を、JTへの製造独占権の付与と引き換えにほとんど全く失ったことを、日本の葉タバコ農家たちにはそろそろ気付いてほしい。あなたたちは自分で自分の将来を閉ざしたのだ、と。
そして、次にJTの完全民営化・新規参入自由化の議論がなされた時には、もう市場を捻じ曲げるような口出しはしないでほしい。
一介のタバコ栽培愛好家である私にこんなこと言われたかないと思うが、あえて言おう。
あなたたちには、自助努力によって、「日本のたばこ」を復活させてほしい、と。
約8000まで減ったとはいえ、あなたたちはタバコという植物に精通したプロのタバコ栽培家でしょう!
あなたたちが誇りをもって育てた葉タバコは、今のファッションみたいな禁煙運動に負けるはずがないんだから、その誇りを、地域ごとに、個人ごとに、企業ごとに、人々へ伝えられるような制度を作っていきましょうよ!
日本人が、アメリカンスピリットなんかじゃなくて、ちゃんと「大和心」を味わえるまっとうなたばこを作れるように、柔軟な制度を作っていきましょうよ!
人を殺すような物を作ってなにがしたいの?
お前は人殺し?様へ
返信しようか迷いましたが、お答えします。
まず、私は「タバコ」という植物を育てていますが、いまのところ「たばこ」は製造していません。
あなた様がいう「人を殺す物」が法律上の「たばこ」だとしますと、今の日本でJT以外の個人や法人がそれを作ってしまうとお縄になりますから。
ちなみに、JTの筆頭株主は日本政府ですから、そのようなコメントは日本政府にお伝えください。
あと、なにがしたいのかは、まあブログを読んでください(笑)
端的に言えば、私は将来的にはJTの独占がなくなることを願ってますし、そうなったらすぐにでも自分の地たばこブランドを立ち上げたいですね。