明治時代の民営煙草のパッケージ #1 口付たばこ編

日本でたばこの公的独占が始まる明治37年(1904)より前の時代には、日本各地に個性的なたばこメーカーがあった。その数は5000社以上とも言われており、そのほとんどが中小零細企業だった。

そんな古き良き時代のたばこのパッケージをまとめた本がある。

たばこと塩の博物館発行「明治民営期のたばこデザイン」だ。

私はこの本を墨田区の「たばこと塩の博物館」で手に入れたのだが、amazonで調べても出てこないので、ひょっとしたら、流通量が少なくて意外に手に入りづらい本なのかもしれない。価格は4000円近くした。

独占によって得た利潤でこんな全く売れなそうな本を出版しているJTには少し腹が立つのだが、こういう金にならないが文化的な価値のある活動をすること自体は否定しないし、むしろ「いいぞもっとやれ」と言いたい。

さて、今回から3回にわたって、この本に載っているパッケージの中から私が面白いと思ったものを抽出して載せていこうと思う。

明治時代のパッケージだから、著作権の問題は発生しないだろうし、こんな興味深いものを博物館の中に退蔵させておくのはもったいない。お金と一緒で、文化的な著作も人々に解放されることで価値が生まれる。

第一回目の本項は、口付きたばこのパッケージ編だ。口付きたばことは、ちょうど今のたばこのフィルター部分が円筒型の厚紙に置き換わった形式のたばこで、人力で作れることもあり、中小企業の参入が比較的容易だったので、割合としては多く製造された種類である。日本ではもう製造されていないが、40年ぐらい前までは製造されていたようだ。漱石の小説によく出てくる「敷島」はこの口付きたばこである。

たばこに限らず言えることだが、明治のデザインはどれも面白い。西洋と日本の純粋なもの同士が初めて掛け合わされた時代なのだから当然のことで、混沌としている。また、いまでこそ森有礼の英語公用化論を非現実的でばかばかしいことのようにいっているが、当時のデザインを見ると、それはわりと現実的で世の中にそういう機運があったことがうかがえる。

そしてこの時代にはまだ「たばこ=植物」という認識が人々の中にちゃんとあったのだろう。タバコの葉を取り入れたデザインがかなり多くあるのも興味深い。現代の「たばこ=無機物」的イメージを作り出している無機質なパッケージと比べると逆に新鮮だが、私はこっちの方が断然好みだ。

それでは御託はこの辺にして、画像をどうぞ。

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明治時代の民営煙草のパッケージ #2 両切りたばこ編

明治時代の民営煙草のパッケージ #3 刻みたばこ編

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