農水省によると、日本の食料自給率はカロリーベースで39%、生産額ベースで66%らしい。
このグローバル化した時代に自給率のことをどうこう言うのもどうかと思うが、すでに埼玉県の面積と同じぐらいの耕作放棄地があることを考えれば、農地という資産を無駄に遊ばせているという点で、日本が農業の分野で改善しなければならないことも多く、問題意識を持つためのきっかけとして、自給率に着目してみるのもナンセンスではない。
私個人の食生活から言えば、私は環境保護の立場から肉をあまり食べないソフトな菜食主義者で、いつも納豆とごはんと味噌汁みたいな食事をしているので、自給率はカロリーベースでも90%ぐらいだろうと思う。
そんな私に言わせれば、「日本人は肉食べ過ぎ、カロリーベースの自給率を上げたかったら、肉の消費量を減らせばいいじゃん」ということなのだが、これはこれで極論なのもまた確かである。
まあ、そんなことはさておき、食料の自給率に着目するなら、同じようにたばこの自給率にも着目してみたらどうだろうか?というのが本日の話題である。
原料ベースの自給率を計算してみる
JTの国内たばこ市場における当社の販売動向というページによると、JTの日本国内でのシェアは、ここ数年安定して60%ぐらいとなっている。つまり、製品ベースでいえば、日本のたばこ自給率は60%ということになる。
また、財務省のたばこ産業を取り巻く状況というPDF資料によると、JTが使用している原料たばこのうち、国産は約1.9万トンに対し、外国産は5.8万トンとなっているから、JTの使う原料の自給率は約25%ということになる。
JTのシェアは日本で消費されるたばこ全体の60%なので、JTのたばこの原料のうちの25%が国産ということになると、原料ベースのたばこ自給率は約15%ということになる。
日本の原料たばこ自給率は約15%
計算の結果、日本の原料たばこの自給率はほぼ15%だということが分かった。
人によってこの数字のとらえ方は様々だと思うが、あなたはどう思うだろうか?
日々たばこ業界のことを調べている私としては、この数字は「おっ、意外に 高いんだなあ」という感じである。
というのも、日本の葉たばこ農家の数は現在約8000戸であり、1戸の農家の構成員が夫婦二人とじいちゃんとばあちゃんだと仮定すると、国民全体の0.02%の人口で日本のたばこ消費量の15%を賄っているという計算になるからだ。
感覚的にいえば、これは結構すごいことに思えはしないだろうか?
とはいえ、15%という数字は、食料品のカロリーベース自給率=39%の半分以下であるから、仮にカロリーベース自給率が問題視されるなら、たばこの自給率は大問題とされるレベルである。
でも、今のところ、たばこの自給率に言及するコメンテーターや政治家は皆無である。(そういう意味では、自給率という指標は、農水省や族議員たちが自分の都合のいいように使っているだけの無意味な指標というのがひしひしと感じられるのだがw)
日本のたばこ農家って意外に生産性高いんじゃね?説
さて、このブログでは今まで、「独占は農家の利権だ!構造に甘えるなあああ」と何度も文句を言ってきたわけだが、改めて計算してみると、全人口の0.02%が、2000万人の喫煙者が消費するたばこの原料のうち15%を生産しているのは結構すごいことなのではないか?と思えてきた。
というのも、日本の人口のうち、すべての農家の割合は約3.7%ぐらいといわれており、そんなに大量の農家をもってしても、日本のカロリーベース自給率は39%しかないことを考えると、日本のたばこ農家は結構健闘しているのではないだろうか、と思えるのだ。
しかしながら、一見生産性が高そうに見えるたばこ農家たちも、外国産の原料には太刀打ちできないのは確かだ。それは、国産原料の価格が国際標準価格の3倍ということから容易にわかる。国土が狭く通貨高の日本は、タバコとか穀物とか、保存のきく作物の生産には全然適していないというのが、悲しい現実なのだ。
とはいえ、もしも日本の財政が危機に陥って、為替レートがプラザ合意時レベルにまで落ちれば、国産原料が再び日の目を見ることもあり得なくはない。
また、農地の集約によって、コストをもっと下げることもまだまだできるだろう。幸か不幸か、高齢化の進行によって、大規模な農地集約は現実性を帯びてきているのだから、これは十分実現可能だ。
あとは、JTの独占を廃止し、農家が各々で付加価値のある「地たばこ」のような製品を開発できるようにすれば、制度に頼らずとも、日本のたばこ農家の未来を開くことができるのではないだろうか、と私は思う。(私はこれが一番正当で現実的な道だと思うのだが、どうだろうか?)
タバコ種子はコチラ