ソクラテスの煙草は、今のところ日本で唯一のタバコ属植物種子の専門店です。
私はそんな店の店主として、当ブログでかねてから言ってきたように、「たばこ事業法による個人のたばこ自作規制」の撤廃・緩和を訴えています。そもそも「自作」という個人の自由の領域にまで法律が介入しているのは、自由主義の現代にあって明らかに時代遅れです。これはもう「少子化だからマスターベーション禁止な!」レベルの話なので(笑)
しかしながら、今のところ、われわれ一般人が“たばこ”を自作することは違法なのが現状です。
私は、ガンディーの「塩の行進」や、30年前の「どぶろく訴訟」みたいな過激な運動をしようと妄想することもたまにありますが、できるなら日本の民主主義を信じたい。
「悪法もまた法なり」をモットーに、皆の合意のもとに作られた法律を犯すことはしたくないのです。
だから、種子の販売を通して、「菜園家によるタバコ“栽培”」を普及させ、ゆくゆくは在野のアマチュアタバコ栽培者連合みたいなものを作って、穏やかに、合法的に、正当な手段で、自作の規制緩和を勝ち取りたいのです。
とはいえ、たばこの自作が違法の現在、何の実益も持たないタバコという植物を、鑑賞用あるいは政治的な意思表示用として栽培する園芸マニアは、1億2000万の日本人のうち、ほんのわずかしかいないでしょう。
私個人としても、正直、「鑑賞して種を取るだけ」というのは、味気なくてつまらないと思っています。
ということで、規制緩和を訴えるための運動の一環として、今年は全く新たなたばこ製品、いわば「第三のたばこ」の開発に乗り出すことにしました。
それが、「食べるたばこ」であります!!
現在のたばこ事業法で禁止されている「自作」の対象は、喫煙用、噛み用、スナッフ用の三種のたばこの利用形態です。
「生のタバコの葉を食べる」という形態は上記のどれにも当てはまりません。
そもそも、これが違法だったら、生の葉を栽培しているタバコ農家や、観賞用タバコを販売しているサ○タなどの種苗業者はすでに全員犯罪者ですからね。
そういうわけで、私は、たばこの自作を禁じられた市民の苦肉の策として、生の葉に着目したのであります。
タバコは食べられるのか?
タバコは、赤ちゃんの誤飲事故の例からもわかるように、経口摂取すると結構危険な“毒物”になりえます。大人でも、シガレット数本分のニコチン水溶液を摂取すれば死ぬ可能性があります。
ニコチンは、急性毒性という点ではそれほどに危険な物質なのです。
一方で、ニコレットなどのニコチンガムや噛みたばこの存在からもわかるように、ニコチンを経口摂取する方式がないわけでもありません。ニコチンはアルカリ性なので、胃酸で中和することによって本来の急性毒性を発揮させなければ、経口摂取することも可能な物質なのです。
たとえば、『タバコの歴史』大修館書店 によると、アメリカンインディアンのヒバロ族の人たちは、タバコを“タバコジュース”にして摂取していたといいます。
タバコジュースは、タバコを煮出したり、すりつぶしたりして作った、高濃度のニコチン水溶液だそうです。想像するに、その酩酊効果はかなりのものだっただろうと思われます。呪術師たちは、その液体の力を借りることで、シャーマン本来の力を発揮したに違いありません。
これらのことを考え合わせれば、生のタバコを食べることは、可能か不可能かと聞かれれば“可能”だといえるでしょう。
ただし、「ニコチン量に細心の注意を払って」という条件付きですが。
まあ、私が人中となって、どれぐらい食べたら気持ち悪くなるか、とかを調べてみようと思います(笑)
突飛なアイデアのように思えますが、実験がうまくいけば、「食べるたばこ」は「第三のたばこ」、それも「煙を出さない、オーガニックなたばこ」として、これからの時代のたばこの在り方を大きく変えるかもしれません。
品種選定
「食べる煙草」を開発するにあたって、問題となるのは品種の選定です。
実のところ、私は、去年、採種圃場のニコチアナ・タバカムの葉を摘み取って生で食べてみたことがありました。
その時の感想は、
「うん・・・、まあ、食べれなくはないけど、あまり美味しくはない(苦笑)」
といった感じでした。
なので、生のタバコの葉を食べるとしたら、メインで利用するのではなく、ベビーリーフミックスの中に入れたり、パン生地に練りこんだり、ハンバーガーの間に挟んだり、バジルと半々でジェノバソースにしたり、といった脇役的な方法のほうが良いと思います。医療用マリファナを参考にするなら、葉のペーストをクッキーに練りこむというのもありかもしれません。
いずれの方法を取るにせよ、脇役的な利用法となると、ニコチンの濃度は高いほうがよく、少しの葉の量で多くのニコチンを含んでいる品種を選定する必要があります。
ニコチンを高濃度で含むタバコ属植物が存在する!
幸いなことに、タバコ属の植物たちの中には、この特徴を持った種があります。
それが「ニコチアナ・ラスティカ」です。
この植物は、普通種のタバカム種と同じく、南米に起源をもつ品種で、人類が喫煙用に利用してきた2種のタバコ属植物のうちの一つです。
数十年前まで、日本では北海道などで、世界的にはロシアやアメリカ大陸北部で栽培されていましたが、喫味がよくなく、収量もあまり多くないため、現在ではほとんど栽培されていないようです。
当店では、一品種だけ「ケスー」という品種の種子を取り扱っています。
さて、このラスティカ種ですが、先ほども言ったように、ニコチンの濃度がめちゃめちゃ高い植物なのです。
どれぐらい高いかというと、化学産業が発達する前まで、天然由来では最強の農薬であるニコチンの原料として、研究開発がされていたぐらいです。
ちなみに、近年、ミツバチの大量死滅問題などで耳にするネオニコチノイドは、その名前からもわかるように、ニコチンと似た構造の物質です。ニコチンは哺乳類に対しても強い毒性がありますが、ネオニコチノイドはその毒性が昆虫だけに発現するように作られた物質です。
仁尾正義著『煙草工業』によると、ラスティカ種のニコチン濃度は、乾燥した葉で、重量比5%ぐらいという驚異的な濃度らしいので、「食べるたばこ」として、少量を料理に混ぜるにはもってこいでしょう。
栽培開始!
ということで、「食べるたばこ開発」シリーズは、この記事を第一弾として、随時更新していきます。当ブログのカテゴリーに「食べるたばこ開発」というのを追加しておくので、時々そちらをチェックしてみてください。
今のところ、早い時期に蒔いた苗が結構大きくなっていますので、実験は一か月後には開始できるでしょう。ラスティカ種は成長が早いですからね。
毒性については完全な自己責任で、種代は900円かかりますが、もしよかったら、一緒に人中になりませんか?(笑)
もし、この「食べるたばこ」が、人間にとってちょうどいい感じなニコチン摂取方法であり、喫煙の欲求を代替するモノとして十分な質を持っていたとしたら、ますます嫌煙主義が蔓延するであろうこれからの時代においては、ひょっとすると結構いい商売になるかもしれませんよ。
エディブルタバコを開発して特許取るとか?
オリンピックに向けて飲食店が全面禁煙にされても、「タバコバーガー」みたいな料理を出すことによって、ニコチン中毒者がソワソワしなくて済むようになるかも?
スーパーで、「料理用のタバコの葉」が野菜として並ぶ日も来るかも?
いずれにせよ、われわれは人中であると同時に、新たなたばこ文化を模索する開拓使でもあります。
そう考えると、なかなかスリリングで面白いと思いませんか?
一応警告しておくと、ラスティカ種は、栽培環境によっては乾燥葉の重量比で最大5%以上のニコチン濃度になることもあるらしいので、もしやってみたいと思った方がいるなら、ニコチンの致死量とか、科学的性質とか、ご自身でよく調べてからやってくださいね(笑)
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