日本国内でのたばこ製造を許された企業はJTだけだ。
JTはこれまで、他に競争相手のいないたばこ製造の分野で莫大な利益を出し続け、その利益を原資に海外のたばこメーカーを買収し、今や世界第三位の超巨大たばこ企業となった。
しかし、独占という特権を手にする代わりに、JTにはある足枷がはめられている。
その足枷とは、「国内のたばこ農家の保護」だ。
日本国内には、現在、約8000戸のたばこ農家がいる。JTは、その農家たちが作った原料たばこを全量買い取らなければならない、と法律で定められているのである。
たばこ事業法
第三条 日本たばこ産業株式会社(以下「会社」という。)は、毎年、その製造する製造たばこの原料の用に供しようとする国内産の葉たばこ(以下「原料用国内産葉たばこ」という。)の買入れを行おうとする場合においては、すべて、あらかじめ、会社に売り渡す目的をもつてたばこを耕作しようとする者(以下「耕作者」という。)と原料用国内産葉たばこの買入れに関する契約を締結するものとする。
そして国内産原料の価格は、海外産の約3倍だ。
全国たばこ耕作組合のデータによると、28年度の原料たばこ販売実績は約350億円だから、仮にすべてを海外産に切り替えた場合、JTは約200億円ほどのコストカットが可能になる。
これは言い換えれば、JTは毎年200億円ほどの余計なコストを、農家保護のために割いている。ということでもある。
JT発足からの約30年の間、この制度は特に支障なく運営されてきた。
農家保護のコストを国内のたばこの売り上げで賄うことができたからだ。
これはつまり、日本人喫煙者の大部分が、JTのたばこを買うことで農家の保護をしてきた、ということだ。(JTのシェアは、低下したといっても未だに60%ほどある)
しかしながら、この制度をこのままずっと維持することはほとんど不可能に近い。
というのも、ここ最近、日本人の国産たばこ離れが急速に進んでいるからだ。
そのことを表す最もいい例がアイコスだろう。
アイコスの市場シェアは、すでに10%を越えている
アイコスはアメリカのたばこメーカーフィリップモリスの製品であり、そのシェアは、2017年7月の段階ですでに日本のたばこ市場(紙巻き+加熱式たばこ)の10%にまで到達している。
一方、JTは加熱式たばこの分野で完全に出遅れ、今年6月にようやくプルームテックの本格販売を開始した段階だ。この出遅れは数字にも表れていて、JTの2017年1~3月期の売り上げは前年度比5%減、紙巻きたばこの国内販売数は15%減と、なかなかやばいペースである。
※追記
最新のJTのPDF資料によると、2017年7月の紙巻き販売数は前年度比12.4%減、1-7月期は11.3%減だそうです。これは想像以上にやばそうですw
さらに悪いことには、プルームテックの現時点での評判はあまりよくなく、このままアイコスの快進撃が続けば、2018年末にはたばこ市場シェアの30%にまで到達するといわれる加熱たばこ分野で、JTはボロ負けするかもしれない。
仮にそうなった場合、果たしてJTは農家保護の足枷をひきづったまま歩き続けることができるだろうか?
答えは否である。
医療や食品分野への参入、グローバルなM&Aなどを通して経営多角化を進めてきたJTの総売り上げの内訳を見れば、すでに国内たばこの売り上げは約32%でしかない。もしもアイコスとの競争に敗れ、この32%が20%ほどにまで落ち込むとすれば、農家保護にかかる200億のコストはもはや足枷レベルではなくなる。JTに巣食う癌、もしくは自爆装置である。
もし仮にプルームテックが健闘したとしても、そこで得た利益を農家保護コストに充てることはナンセンスだ。というのも、プルームテックに使われるたばこの葉の量は紙巻きに比べればかなり少ないからだ。
いずれにしろ、「独占のメリット>農家保護のコスト」の時代はもうすぐ終わろうとしている。
一民間企業であるJTに農家保護のコストを押しつけることはもうできないのだ。
また、仮に今のままの制度を続け、JTの経営が悪化するとしたら、政府が約33%を保有するJT株の資産価値は大幅に目減りする。大多数の国民にとってそれは許容できる事ではない。
どう考えても、ここらで改革が必要ではないだろうか?
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