現在、政府はJTの株式のうち3分の1、約33パーセントを保有している。
これは日本たばこ産業株式会社法が、
“政府は、常時、日本たばこ産業株式会社(以下「会社」という。)が発行している株式の三分の一を超える株式を保有していなければならない。”
と規定しているからだ。
この制度の主意はたばこ農家保護であるが、制度ができた経緯などは下の記事を参考にしてもらいたい。
さて、筆者が今回本稿で言いたいのは、
「この制度って、時代錯誤すぎない?」
ということだ。
株式の30%強が政府によって保有され絶対に売りに出されないということは、株価に対して無視できない下値抵抗になるし、株価が下がらないということは、グローバルなM&Aが活発に行われる現在のたばこ業界において、JTにとってかなりのメリットでもある。
株式のほかにも、国内での製造独占権付与や官僚とJTの癒着など、この国の制度は、たばこを排斥するどころか積極的に保護している。
だが、世界的にも国内的にも禁煙が進む現在、たばこ産業はもはや保護するべき産業ではないはずだ。今の現状は明らかに時代に合っていない。
これからの時代、たばこは、少数の吸いたい人のために、わずかな数の中小零細企業が製造するという形であるべきだ。禁煙の時代に、大企業にのみ製造独占権を与え、国ぐるみでその企業を保護するというのは、結果的にみて喫煙者の数を減らすことには貢献しないからだ。
JTなどの大企業は必ずロビーングや献金を行うし、政治家や官僚たちも利権のおこぼれにあやかろうとするから、禁煙政策が進まないのは目に見えている。
たばこ政策を、吸う人も吸わない人も誰も不幸にならないような方向に導くためには、国家ぐるみでのたばこ産業保護はやめ、独占など廃止し、中小企業の参入や個人による自作を解禁するのが一番いい。
そうすれば、たばこを吸う人の数はすぐに減少し、たばこは、今のようなコモディティー的位置づけではなく、一部のマニアックな喫煙者だけのための嗜好品になるはずだ。