これまで三回にわたって試作してきた、食べるたばこシリーズ
今回はその第4弾にして、シリーズ最高傑作が完成した!
題して、
タバコの種は、うな丼の最高のスパイスだ!
~荒川天然ウナギとタバコの種の奇跡の出会い~
これまでの食べるたばこシリーズはただのネタでしかなかったが、正直、今回は商品として全然いけるレベルだった。
芥子の実、麻の実など、薬用植物の種子は食品として結構流通しているが、ついにタバコの実も食用となる時代がきたのだ。
私はどうやら、食の世界に新たな食材が誕生した瞬間に立ち会ってしまったのかもしれない・・・
釣りでウナギを捕獲する
絶滅が心配されているウナギも、川の中にはまだまだ結構いる。
今回は、夕方から深夜まで粘って2匹の天然ウナギを捕獲した。夜の8時ぐらいに一匹、12時に一匹、どちらも60cm、250gぐらいの食べごろサイズである。
釣り方は、3号の中通しおもりを使ったごく簡単なもので、餌はミミズ。鈴をつけた安物のロッドを2本使い、岸沿いの淵の中を攻めた。
ウナギ釣りは汽水域で行うのがメジャーなようだが、今回私が釣ったのは、海から50㎞ぐらい離れた完全なる淡水域だ。ウナギは結構どこにでもいるのだ。
ちなみに、これは私の推測なのだが、潮の満ち引きと無縁な中流域や上流域のウナギには、“時合い”はあまり関係ないのだと思う。釣れる時間はいつもバラバラだ。
釣ったうなぎは、3日ほどかけ流しの地下水で活かし、胃や腸の内容物を排出させた後で捌く。通称泥抜きと呼ばれるこの活かし期間は、あまり長くとる必要はない。消化管が綺麗に空になれば十分だ。私の経験上、大体3日もすれば胃の中の餌はすべて消化されフンとなり排出される。
ウナギを捌く
「串打ち3年、割き8年」といわれるように、世間ではウナギを捌くのはなかなか難しいこととされている。
だが、数匹分ぐらい練習し、よく研いだ包丁で丁寧に時間をかけてやれば、ウナギを割くのはそんなに難しいことじゃない。
分業が進んだ現在では、誰もが自分のできることを矮小化しているけど、大抵のことはやってみればできるのだ。
捌き方は、氷水で仮死状態にさせたウナギの頬に金串で目打ちをし、関東流の背開き、背びれと胸びれは切り取った。
たれを作る
捌いて身を取った後の骨と頭は捨てずに、炭火で焼いてからたれのダシにする。骨と頭を使うことで、ウナギ屋の継ぎ足しのたれじゃなくても、十分に深みのあるたれができる。
たれの調合は、砂糖と酒としょうゆを1:1:1で。
ごく簡単な比率だが、この辺の爺さんたちは昔からこの比率でやってきたといっていたし、私もこれが黄金比だと思う。
これを若干とろみがつくまで煮詰めれば、たれの完成だ。
焼きは関西風で
今回のウナギは、あまり脂がのっていない感じがしたので、蒸しの工程は省き、関西流の焼きだけで行くことにした。
蒸さない代わりに長めに焼いてみたが、焼き時間はもうチョイ短くてもよかったかなという感じ。
今回ウナギを焼くのに使った熱源は、薪の燠と備長炭一本。
わざわざ備長炭を使う必要は多分ないと思うけど、今回はたまたま、軒下に一本だけ転がっていたから、それを使った。なければ普通の黒炭でも十分だと思う。
それと、七輪で焼くなら、串は金串を使った方がいいと思う。竹串だと写真のように焼けて折れてしまった。
ウナギから出た脂で身を揚げ焼きにするようにじっくり焼き、身がきつね色になったら、たれを2回つけてさらに軽く焼き、白ご飯の上にのせれば、うな丼の完成だ!
と言いたいところだが、今日の料理の主役は天然ウナギではない。
タバコの種だ。
まだやることが残っている。
タバコの種子を炒る
今回使う種子は、ニコチアナ・ラスティカという、高濃度のニコチンを含む種のタバコの種子だ。
とはいえ、たばこ造りの専門書「煙草工業」(仁尾正義著)によると、ニコチンは種子にはあまり含まれていないらしいので、毒性については気にする必要はないと思う。ニコチンを自給する!という食べるたばこプロジェクトの当初の目的からは離れてしまったが、まあいっかw
また、この本によると、タバコの種子はかつて搾油用としても使われていた歴史があるらしい。この本は戦後すぐぐらいに書かれた本なので、もしかすると私は、約半世紀ぶりにタバコの種子を食用にした人間なのではないか?と少し戦慄した。闇に葬られた食材を再び掘り起こしてしまった気分である。
ラスティカ種の種子は普通のタバコの種子に比べて少し大きく、約1㎜ぐらいである。
種子は少し水に浸してから、高温の鍋で約15秒ほど炒った。
炒った種子はやや苦く、ゴマのような香りがする。
ちなみに、この品種はうちの店で100粒890円で売っているから、この量で約25000円ぐらいする、超高級食材でもある(笑)
史上初の試み、うな丼とタバコの種子の出会い
正直なところ、店で食べれば5000円ぐらいする天然ウナギのうな丼を実験台にするのは少し気が引けた。
だが、そこはタバコの種屋の心意気。
ここでためらってはいけないと思い、炒った種子全量、約3000粒をうな丼の上にふりかけてみた。
ウナギ×タバコの種子
これはおそらく人類初試み。ついにその瞬間が!
結構な量をふりかけたが、タバコの種子が黒っぽいので、うな丼の濃い色と相まって、その存在は思ったより感じられない。
見た目は全然いけるぞ!
食ってみた!
炒った段階の香りで、ある程度予想していたが、改めて食べてみると、
これは!!想像以上の旨味!
と、脳内を驚きが駆け回った。
でも、天然ウナギが美味いのはあたりまえ、そもそもこいつは脇役だ。
美味いのはタバコの種子だ。
あの粒々をかみつぶした瞬間、香ばしい香りが口腔内に広がる。
やや苦い感じも、さながら寿司のワサビのようなアクセントを加えてくれる。
口の中で粒々が残り邪魔をすることもなく、むしろ弾力のある天然ウナギの食感にさらに彩りを加えている。
いや、逆か、ウナギがタバコの種子を引き立てているのか!?
ウナギとタバコの種子の織り成す味の饗宴に、脳が追い付いていけない!!
気づけば、2種の食材の奇跡的な出会いを堪能する間もなく、私は一杯のうな丼を間食していた。
・・・
ごめんなさい、誇張表現が過ぎましたw
でも、タバコの種子は普通に美味しい。
ゴマの味と芥子の実の食感が合わさった感じ。
これは新種の食品として全然いけるレベル。
さんまのみりん干しなどにゴマが振り掛けてあるけど、雰囲気としてはあんな感じで、スパイスとして使えると思う。
平賀源内的こじつけマーケティングで、「うな丼×タバコの種子」を世の中に刷り込もうかな(笑)
ところで、「土用の丑の日=ウナギ」というのは、平賀源内が考えたマーケティング戦略だったといわれている。
実は、夏の盛りの今の時期はウナギの旬ではなく、とくに天然もののウナギはまだ脂がのりきっておらず、最高の状態とは言い難い。源内の時代は、当然、養殖のウナギなんて存在しなかったから、言ってしまえば、土用の丑の日キャンペーンは、旬を外れて売れない商品を売るためのこじつけキャンペーンだったともいえる。
とはいえ、人間社会を形作っているものは、実際のところほとんどがこじつけや迷信だったりするから、それを非難するのも粋じゃない。
ということで、私は源内を見習い、新種の食材タバコの種子とウナギを無理やりこじつけて、マーケティングしてみようと思う。
が、今のところいい文句が思い浮かばないw
禁煙運動がもっと盛んになって、たばこが絶滅するぐらいまで追い込まれたら「タバコ=絶滅危惧種=ウナギ」というこじつけで売り込めるかなあ(笑)
タバコ種子はコチラ