たばこの新規参入と自家製造を禁止しても、日本にとって何も得はない

これから話すことは、「たばこはそんなに危険ではないし、一人で吸っている限り、周りに迷惑も掛からない」という筆者の持論を前提に出発するので、「たばこの存在自体が悪である」と思っている読者にはまずその前提を理解(≠賛同)しておいていただきたい。もっとも、そんな人はこのブログの読者にはいないかもしれないが(笑)

 

タイトルにある通り、日本の現行のたばこ製造の制度、すなわち「製造たばこは会社(JT)でなければ製造してはならない」という、事実上の専売制度は、たばこの原材料の大部分が輸入品となっている現在、日本にとってマイナスでしかない。

農水省が公表している貿易の統計によれば、2015年度、日本は4237億円分のたばこを輸入している。実はたばこは日本が輸入している農産物の中で、豚肉に次いでその額が第2位の農産物なのだ。ほとんどの人は、たばこによる外貨流出が牛肉や小麦や大豆によるそれよりもはるかに多いという事実に気づいていないだろうが、これは相当深刻な問題である。(ちなみに日本はたばこの輸出もしているが、その額は同年では235億円でしかない)

ご存知の通り、豊かさの指標の一つであるGDPは

GDP=家計消費+設備投資+政府支出+純輸出(輸出-輸入)

という式であらわされる。すると、日本はたばこの輸入により毎年4000億円分のGDP押し下げを食らっていることが分かる。グローバル化の時代に、ある品目の輸入額だけを取り上げてどうこう言うのは少しナンセンスな気もしなくもないが、単純に考えれば、毎年4000億円がたばこによって海外に流出しているのは紛れもない事実である。

日本を一つの家に例えてみる


ここで、日本という国を1つの家に例えてみよう。すると、その家はお父さんの吸うたばこによって4000億円の支出をしていることになるのだが、こんなときあなたがその家の子供だったら、どう思うだろうか?、

 

おそらく、「父さんたばこやめて!」

と思うだろう。

 

…少なくとも今の法制度のもとでは。

 

だが仮に、「新規参入は一定の基準を満たせば可能であり、自家消費分のたばこの製造は許可される」という一文が、現在の法制度に追加されたらどうだろうか?

 

「やめるか、純国産のたばこにするか、そうでなければ庭で自分で育ててよ!」

 

とならないだろうか?

 

実はここまでで、私があえてまだ説明していないところがある。それはたばこが徴税の仕組みとして重要な側面を持っているということである。2015年の日本のたばこによる税収は全税収56兆円のうち約2兆円だから、それなりに多額なのだ。

そこで、新たな登場人物としてこの家の財布を握る“母”という人物を追加してみよう。言うまでもなくこの“母”は現実の世界での政府である。

この母は少し変わった立場にいる人物で、父や子から少しずつお金を回収し、それを家の修理や、子供の教育や、おじいさんの介護などに使っている。回収の方法は様々で、たばこからも多くのお金を回収している。だが、母はこの家に入って来るお金や、この家から外に出ていくお金に関してはあまり関心がないようだ。外からお金を稼ぐのはあくまで父や子供の仕事なのだ。

今のところ、この家は黒字である。父や子が、家の外に流出するよりも多くのお金を稼いできてくれるからだ。

しかし、最近この家には暗雲が立ち込めている。働き盛りの父や子供が少なくなり、仕事をあまりしない爺さんや婆さんが増えてきているからだ。働く人が少なくなっていけば、自然と、この家の収支はマイナスの方へ傾いていく。

それでも、この母は基本的に家の外のことには関心がないので、この家から流出するお金のことは考えていない。父や子からどうやってお金をもらい、それをどう使うかを考えているだけである。

残念なことに、母は頑固で旧弊だから、たとえば父が、

「たばこを買うことによってこの家から外国に流出する金が毎年4000億円以上もあるから、それを節約するために、庭でたばこを作って吸いたいんだけど。農地なんてたくさん余ってるんだし。儲かった4000億のお金を家の中だけで回せば、俺も子供ももっと豊かになるじゃんか」

と合理的な提案をすると、

「何言ってんの?そんなことをしたら私のところに入る金が減るでしょ?それを実行に移したら逮捕するから。まあ、タバコを“栽培する”だけなら許すけど。それを加工して吸ったら違法ね。」

と全く合理性のない回答をするのである。

そして、何年後になるかは知らないが、この家の収支がマイナスになった時に、インフレで自分のヘソクリの価値が大幅に目減りしているのを見て、母は初めて気づくのだろう。目先の2兆円よりも、毎年家から流出する4000億円の方へ目を向けておけばよかったということに。

 

あとから聞いた話では、実は、母にはジェイティーという恋人がいて、彼にだけ「たばこを製造する権利」を与えているのだそうだ。母は、家から出ていく金のことは考えてないから、ジェイティーが外国から買ってきた原料を使ってたばこを製造していても文句は言わない。ジェイティーは、昔は国産原料を使ってたばこを作っていたが、それでは自分の取り分が減るので、最近は安い外国産原料に切り替えているらしい。

ちなみにこの母は、ほかの家にいい顔をするために、ブリティッシュアメリカンさんやフィリップモリスさんがこの家の中で販売活動するのは許している。ただし“販売”だけで、製造はダメなのだそうだ。

まあ一応、この家では、父のような人が「たばこを自分で作りたいんだが、どうだろうか?」と提案するぐらいの自由は残っている。また最後の砦として、“憲法”という母よりも強い力をもった最強の家訓があり、その家訓の前では、母も父も公正に裁かれる…

はずなのだが、

この憲法を運用する人たちが母と癒着していたりいなかったりで、この家訓はいつも母に有利なように解釈されるようだ。30年ぐらい前に、「憲法で保障されてるやろ」と言って勝手に酒を造った人がいたのだが、その訴えは見事に退けられてしまった。

たばこの場合、母とジェイティーが恋仲なので、「たばこを自分で作りたいんだが」と訴える人は、嫌がらせをされたり、場合によっては暗殺されるかもしれない。個人的には、そんなことはないと願いたいが(笑)

 

と、擬人化が思った以上に面白かったので、長々と書いてしまったが、一言でいえば、今の日本では、たばこの自家製造や新規参入を解禁しても、税収のマイナス分は貿易収支のプラス分で相殺されるから、国民にとってなにも問題はなく、逆に、JTの独占をこのまま放置すれば、たばこ代という一種の固定費が毎年海外に流出することになり、国民は損しかしないよ?という話でした。

安倍総理、たばこの岩盤規制をぶっ壊してくれっ!!!

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