現代のたばこは遺伝子組み換えか?

現在、アメリカを始めとする様々な国で、従来の作物から遺伝子組み換え作物への転作が進んでいる。

私は遺伝子組み換えの作物やそれらを使った食品自体に対して特段ネガティブな感情を抱いているわけではない。昨年アメリカに滞在していたときには、遺伝子組み換え食品にどっぷりと浸かって生活していたので、今の私の体を構成しているタンパク質のうちのいくつかは遺伝子組み換え食品由来のものだろう。それでもこうしてぴんぴんしているので、まあそんなに問題はないんじゃないかと思っている。

そんなことを考えながら、煙草をくゆらせて窓の外をぼんやり眺めていたときに、ふと気になったことがあったのでここに書いておこうと思う。

それは、「俺が今吸っているこのたばこは遺伝子組み換えなのか?」ということだ。

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私は、普通の人と比べればかなり植物マニアの人間だと自覚しているし、多くの植物の中でもタバコには惹かれるところがあって、こうして種子を販売したりしているわけだが、自分でタバコを育ててきて、今の今までそんなことは一度も考えたことがなかった。我ながら不覚であり、不思議でもある。

考えてみれば、いちばん最初にこの世に誕生した遺伝子組み換え作物はタバコだったのだから、現在、商業用の原材料として遺伝子組み換えタバコが使われていても何の矛盾もない。むしろ遺伝子組み換え原料を使っていない方がおかしいぐらいである。

そこで、誰かがこうした情報をネット上に公開していないかと思って、「遺伝子組み換え たばこ」などと検索してみたが、目ぼしい情報は見つけられなかった。

だが、英語で「GMO Tobacco」と検索すると、「90%のたばこは遺伝子組み換えだ」といった内容のページが複数ヒットした。それらのページによると、タバコの世界でも遺伝子組み換え品種は既に使われているようだ。もっとも、これらのページのほとんどは、嫌煙家やオーガニック産業で食っている人達が、「煙草=悪=遺伝子組み換え」というロジックを使って自分の優位性を高めるために作っている面もあり、少し眉唾ものだから、全面的に信じるのも良くない。

そんなわけで、もっと学術的な情報を得るべく、google scholar を使ってタバコの原料に関する論文などを探してみたが、ここでも的確な情報は見つからなかった。どれもこれも生物学や薬学などに関するものばかりである。(これは裏返せば、タバコという植物に様々な遺伝子を組み込むのが比較的容易であり、商業用の遺伝子組み換えタバコがすでに豊富に存在している可能性を示唆しているのだけれど)

ということで、われわれのような一般人が、タバコの原料が遺伝子組み換えなのかどうかを知ることはなかなか容易なことではないらしいことは分かった。ここからは推測に頼るしかなさそうだ。

 

筆者の見立てでは、現在のタバコに使われている原材料のうち、少なくとも外国産のものの大部分はすでに遺伝子組み換えタバコなのではないかと思われる。その理由は、下に挙げる通りである。

・歴史上最初の遺伝子組み換え植物はタバコ。タバコは遺伝子組み換え品種を作出するのが容易な作物。

・大豆やトウモロコシなど、多くの作物が遺伝子組み換え化しているなか、タバコだけが非遺伝子組み換えである理由が見つからない。

・タバコビートルや蛾など、タバコにつく害虫は多く、BT遺伝子をもった品種を使うことでそれらの害虫の害がかなり減ることは容易に想像できる。

・モノカルチャー的、機械的に栽培される今のシステムでは、遺伝子組み換えタバコ導入による農薬や除草費用の削減効果はかなり高いはず。

・たばこには遺伝子組み換えの表示義務はないから、消費者に気づかれにくい。そもそも今の時代にたばこを吸う人たちは、遺伝子組み換え作物にヒステリックな反応を示すような層ではなさそう(笑)

・遺伝子組み換えタバコに関する情報が簡単に手に入らないのが逆に怪しい。

こうして考えてみると、ますます、現在のたばこが遺伝子組み換えであると確信するのは私だけだろうか。

思えば、タバコほどその生産と消費が分離された農作物は珍しい。遺伝子組み換えタバコのことを考えてみたら、そのことをより強く実感させられたような気がする。遺伝子組み換え作物の良悪は別にしても、自分の肺に流し込む煙のことについてここまで無知でいられたのは、いま思うと結構恐ろしいことだと思う。

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